シナー選手とアルカラス選手の存在感
ATPファイナルズはヤニク・シナー選手が優勝(38年ぶりの全試合ストレート勝利)を飾りました。全豪オープンと全米オープンの2冠を獲得し、年間最終ランキングを1位で終えたシナー選手は、まぎれもなく2024年シーズンで最も活躍した選手と言えるでしょう。
トップ10選手を見ていきましょう。
ATPランキング | 選手 | ポイント |
1 | ヤニク・シナー | 11,830 |
2 | アレクサンダー・ズべレフ | 7,915 |
3 | カルロス・アルカラス | 7,010 |
4 | テイラー・フリッツ | 5,100 |
5 | ダニール・メドベージェフ | 5,030 |
6 | キャスパー・ルード | 4,255 |
7 | ノヴァク・ジョコビッチ | 3,910 |
8 | アンドレイ・ルブレフ | 3,760 |
9 | アレックス・デミノー | 3,745 |
10 | グリゴール・ディミトロフ | 3,350 |
ポイントを見ても、1万ポイント越えはシナー選手のみであり、その圧倒具合がわかります。
さらにツアー1年間の勝率で比較してみましょう。
支配度ランキング | 何年シーズン / 選手 | 勝率 |
1 | 2005年 / フェデラー | 95.3%(81勝4敗) |
2 | 2006年 / フェデラー | 94.8%(92勝5敗) |
3 | 2015年 / ジョコビッチ | 93.2%(82勝6敗) |
4 | 2004年 / フェデラー | 92.5%(74勝6敗) |
5 | 2011年 / ジョコビッチ | 92.1%(70勝6敗) |
5 | 2024年 / シナー | 92.1%(70勝6敗) |
なんとノヴァク・ジョコビッチ選手がフェデラー選手・ナダル選手の2強時代を打ち破ってブレイクした、2011年のジョコビッチ選手と2024年のシナー選手の勝率が92.1%(70勝6敗)と全く同じなのです。
2024年のグランドスラムのみに関して言及すると、シナー選手とアルカラス選手は2つずつとイーブンな成績です。ところがアルカラス選手のランキングは、グランドスラム無冠のズべレフ選手より下の3位となってます。
これはシナー選手がグランドスラム以外のATP1000マスターズやATP500などでも優れた成績を収めたのとは対照的に、アルカラス選手がグランドスラム以外では卓越した成績をあげられていないのが要因です。テニスのツアーは非常に過酷で、「全てに全力では故障は不可避」との声もあるため、アルカラス選手が巧みにグランドスラムに照準を合わせた調整をしている面もあると考えられるため、単純な年間勝率だけで優劣を決めるのも違うのかもしれませんね。2024年のアルカラス選手は確かな存在感を示し、テニスの顔であり続けました。
全豪と全米の2冠のシナー選手、全仏とウィンブルドンの2冠のアルカラス選手、この2人が2024年シーズンでは特に目立っていました。
次に、シナー選手とアルカラス選手以外のトップ10選手を見ていきましょう。
テイラー・フリッツ選手がキャリアハイ4位と大躍進の1年でした。また、アレックス・デミノー選手も初のトップ10入りと目立っていました。グリゴール・ディミトロフ選手はヤングガンズ世代の33歳とベテランながら、堂々のトップ10入りを果たしており、好調です。
ズべレフ選手もキャリアハイタイの2位と存在感を放っています。ズべレフ選手はシナー選手に4勝2敗、アルカラス選手に6勝5敗と勝ち越していることも特筆すべき事項です。しかしそのズべレフ選手に対して相性がいいのがテイラー・フリッツ選手でして、フリッツ選手はズべレフ選手に7勝5敗と勝ち越し(ズべレフ選手の4連敗)ています。このようにプレースタイルによって選手間で得意な選手・苦手な選手がいて、一概に「この選手が最強」とはならないことも、テニスの醍醐味の一つでしょう。
メドベージェフ選手、ルード選手、ジョコビッチ選手、ルブレフ選手はトップ10で2024年シーズンを終えたものの、シーズン通して見ると本調子とは言えない状態でした。メドベージェフ選手は「ツアーのボールが飛ばなくなってきている」と苦言を呈していることからも、ここ数年のツアー環境の変化に対応し切れてないように思います。ジョコビッチ選手はパリ五輪金メダルを獲得してからというものの、テニスのモチベーションが落ち着いたような印象を受けます。ルブレフ選手は試合中のメンタルコントロールに課題が残ります。
2024年シーズンはBIG4の2人、アンディ・マレー選手とラファエル・ナダル選手が引退するなど、テニス界に大きなショックがありました。また、ジュニアの頃からナダル選手のライバルと言われていたガスケ選手、2009年全米オープン覇者のデルポトロ選手、2020年全米オープン覇者のティーム選手の引退もありました。
ロジャー・フェデラー選手は2022年に既に引退しておりますので、残るBIG4はノヴァク・ジョコビッチ選手のみとなりました。そんなジョコビッチ選手はスーパースラム(キャリア・グランドスラム+五輪優勝+ATPファイナルズ優勝)を達成しており、パリ五輪優勝後はパリマスターズも欠場するなど、近いうちに引退宣言があるのではと囁かれています。
2025年シーズンの展望
2025年シーズンも引き続き、グランドスラムはシナー選手とアルカラス選手の2人が最有力候補でしょう。
他にもテイラー・フリッツ選手、ジャック・ドレーパー選手、ロレンツォ・ムゼッティ選手、フランシス・ティアフォー選手、ベン・シェルトン選手、アルトゥール・フィス選手などがグランドスラムやATPマスターズ1000などの大きな大会で勝ち上がっていくでしょう。