この記事ではスポーツクラブや習い事ではなく、学校の部活に入る意義を考えていきます。
学校教育の要素の一つである部活
特定のスポーツや楽器・美術などの技術を高めるなら、その道の専門知識を持った指導者がいるスポーツクラブや音楽・絵画教室などに通った方が上達が早いという意見もあるでしょう。
しかし、それでも学校という括りの中にある部活は「教育」という観点から重要な活動であり、単純に技術習得の早さだけで優劣をつけるべきではないと考えます。
このように部活の意義を考えていくと必然的に「学校教育の意義」について向き合うことになります。
学校教育の意義とは?
学校教育の意義を考えると、まっさきに出てくるのは「集団行動の大切さを学ぶこと」という意見が出てくるでしょう。
ごもっともな意見です。一方で「学校教育の意義=集団行動の大切さを学ぶこと」という主張はこれまでも多くの人が議論を交わしてきました。この記事は「部活という文脈での学校教育」を語るのが趣旨ですので、もう少し技術的な面に焦点を当てた話をしていきたいのです。
私は「PDCAサイクルを回して、期限までに目標を達成していく過程で試行錯誤していくこと」こそが部活の意義だと考えます。
それは授業でも定期テストまでに必要な勉強をしていく過程で学べることはないの?という反論もあるでしょう。しかし、勉強が苦手な生徒はどうでしょうか?そもそも勉強をしようとしない生徒も一定数います。そんな生徒でも、自分が興味あるスポーツ・楽器・美術などの分野でしたら、楽しく前向きに取り組んでいけるでしょう。
中高生は感受性豊かな時期であり、好奇心旺盛です。なにかしら興味のある分野はあると思います。それが数学や歴史に興味持てなくても、例えばテニスなら興味を持てるという生徒は、テニス部に入ることで学校教育の中でPDCAサイクルを回していく過程で学びを得ていきます。
PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルとは、Plan・Do・Check・Actionの頭文字を取った言葉で、物事に取り組むときの工程を分割・整理したものです。
部活を例に解説します。3年生の夏に県大会優勝という目標を立てたとします。この目標を実現するために3年間なにをするかの計画を立てるのがPDCAサイクルの一つ目のPlanに該当します。
Planは顧問の先生や部員と話し合って決める必要があります。なぜならば、部活の練習でどのようなメニューをするかということに関わってくるからです。多くの部員の納得感がないと、不満を持った部員は退部してしまうかもしれません。全員が納得いく練習メニューを組むのは現実的ではないかもしれません。その場合、納得のいかない部員にはしっかりと向き合って話し合う、個別メニューを検討するなどの行動が求められるかもしれません。
Planの立て方としては、3年生の夏の県大会という日程から逆算して、目標を達成するためには1年生の間に〇〇という技術を習得している必要がある、2年生の間には県大会のベスト8に進出する程度の実力が必要…などの「目標のブレークダウン」をしていきます。
そして1年生の間に〇〇という技術を習得すること、というブレークダウンした新たな目標ができます。そうしたら、さらにそれを短い期間に分割して目標を立てていきます。例えば、1学期の間に〇〇というショットを真っすぐに正確に打つことができる、夏休みの間に〇〇というショットをクロスに正確に打つことができる、2学期の間に〇〇というショットを練習試合中に自由に打ち分けることができる…というようにです。
そしてこのように計画を立てたら、それを実践(Do:PDCAサイクルの2つ目)していきます。1学期の計画が「〇〇というショットを真っすぐに正確に打つことができるようにする」なら、1学期の練習メニューは「〇〇というショットを集中的に何本も打つ」というものになるはずです。
1学期が終了したとしましょう。すると今度はPDCAサイクルの3つ目のCheckの出番です。いわゆる効果測定です。Pで計画を立て、Dでその計画を実行しました。さて、1学期という一定の期間が終了した今、その1学期終了時点での計画は達成できたのかということを検証していきます。
「〇〇というショットを真っすぐに正確に打つことができるようにする」という計画が達成できているかを検証するには、2つのポイントがあります。1つ目が「真っすぐに打てているか」ということ、2つ目が「正確に打てているか」ということです。
まず1つ目の「真っすぐに打てているか」ですが、Checkを正確にするには「具体的に何センチまでは横にズレても許容範囲だけど、何センチ以上ズレてたら真っすぐではない」という基準を決める必要があります。例えばプロだと2センチのズレは許されないけど、アマチュアに同じ基準は厳しすぎる…でもさすがに10センチのズレまで許容してしまうと、ライン際で打ち合ったときに精度が低いショットではアウトになってしまうため、5センチの範囲内で正確に打ち分けられる精度は欲しいといったような話し合いを部内でした上で、具体的な基準を決めていきます。
次に2つ目の「正確に打てているか」です。たとえ真っすぐに打てていたとしても、ラインを越えてアウトしてしまっては得点に結びつきません。ライン内側何センチまでにショットを打てているかを正確に検証しましょう。
そして1学期の目標が達成できたか、できていないかをCheckできたとしたら、その検証結果を踏まえて3年生の夏までの計画が当初のままでよいか検討し、必要であれば計画を変更します。これがPDCAサイクルの4つ目のActionです。
まとめ
スポーツは結果が大切ですが、学校教育の中で行う部活においては過程も同様に重要です。
上述しましたが、部活でPDCAサイクルを回していく過程で必然的に部員全員とのコミュニケーション、上手くいかなかったときの向き合い方・修正力、苦手な部員との付き合い方、期限までの適切な計画の立て方、立てた計画に対する実行力などを磨いていきます。
勉強はどうしても一人で教科書・参考書と格闘する時間が長くなります。集団で大きな目標に向き合う部活は、非常に有意義な学びの場であり、単なる技術習得のためだけに存在するのではないことが分かって頂けましたでしょうか。