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パリ五輪2024

2024年7月27日から8月4日まで開催された、パリ五輪のテニス競技について見どころを紹介します。本大会はノヴァク・ジョコビッチ選手の生涯ゴールデンスラム達成、BIG4の一角であるアンディ・マレー選手の現役引退など、見どころが満載でした。

大会9日目(8月4日)を終えて

男子シングルス決勝の舞台で、ノヴァク・ジョコビッチ選手がカルロス・アルカラス選手を7-6(73), 7-6(7-2)で破り、キャリア初のオリンピック金メダルを獲得しました。これにより、ジョコビッチ選手が生涯ゴールデンスラムを達成したこととなります。

※生涯ゴールデンスラムとは、四大大会とオリンピックを全て制することです。過去に男子ではアンドレ・アガシ選手とラファエル・ナダル選手が達成しており、ジョコビッチ選手は3人目の達成者となります。

ついに成し遂げた。自分の身体と家族の全てを賭けてきた。ようやく成し遂げることができた

ジョコビッチ選手の闘志がよく表れたインタビューでした。

テニス種目において、37歳でのオリンピック金メダルは史上最年長となります。

第1セットだけで1時間34分、試合全体で2時間50分と濃い試合でした。第1セットだけでもジョコビッチ選手は5回、アルカラス選手は8回のブレークポイントがありましたが、お互いにものにすることができませんでした。長い試合になると若手のアルカラス選手が体力的に有利になるかと思われましたが、ジョコビッチ選手は一歩も引きませんでした。

長いキャリアで初のオリンピック金メダル、生涯ゴールデンスラム達成は本当に素晴らしい偉業です。

出典:ANNnewsCH

大会8日目(8月3日)を終えて

男子シングルスの3位決定戦でロレンツォ・ムゼッティ選手がフェリックス・オジェ アリアシム選手を6-4, 1-6, 6-3で破り、銅メダルを獲得しました。

女子シングルスの決勝で鄭欽文選手がドナ・ヴェキッチ選手を6-2, 6-3で破り、金メダルを獲得しました。

男子ダブルスでアンディ・マレー選手の現役最後の試合の相手となった、トミー・ポール選手とテイラー・フリッツ選手のダブルスですが、3位決定戦で勝利して銅メダルを獲得しています。

大会7日目(8月2日)を終えて

ノヴァク・ジョコビッチ選手がロレンツォ・ムゼッティ選手を6-4, 6-2で、カルロス・アルカラス選手がフェリックス・オジェ アリアシム選手を6-1, 6-1と、共にストレートで勝利して決勝に進出しました。また、イガ・シフィオンテク選手が3位決定戦で勝利して銅メダルを獲得しました。

ジョコビッチ選手とアルカラス選手の対戦成績は3勝3敗の互角です。直近のウィンブルドン選手権ではストレートでアルカラス選手が勝利しています。ジョコビッチ選手の怪我、アルカラス選手の今シーズンの好調ぶり(GS2冠)を見ると、アルカラス選手が優位だと思われます。

しかし、同じコートであるフィリップ・シャトリエでは、2023年全仏オープンでジョコビッチ選手が勝利しています。またBIG4の気力・闘争心も無視できません。ジョコビッチ選手はオリンピックに5大会連続で出場していますが、決勝進出は初です。優勝したとしても近年ではコート上に寝転がって喜びを表すことは少なくなってきたジョコビッチ選手ですが、なんと今大会の準決勝でムゼッティ選手に勝利した瞬間、コート上に大の字になったのです。

オリンピックで準決勝を突破したことは一度もなかった。大きなハードルを越えることができた。正直に言うと、負けた準決勝のことばかり考えていた。第2セットはとても緊張していた。試合前も試合中もとにかく緊張していた。

準決勝後のジョコビッチ選手のインタビューで、彼は上述しました。これだけキャリアで経験を積んだベテランのジョコビッチ選手が、これほど緊張していたことを繰り返すのは非常に珍しいです。それだけオリンピックにかける想いが強く、プレッシャーも相当なものということでしょう。

最もいい色のメダルを首にかけるのは、絶好調なアルカラス選手か、それとも”生涯ゴールデンスラム”に王手をかけたジョコビッチ選手か、決勝の舞台が楽しみです。

勝者大会名サーフェススコア
2024アルカラスウィンブルドン6-2, 6-2, 7-6
2023ジョコビッチATPファイナルズハード6-3, 6-2
2023ジョコビッチシンシナティハード5-7, 7-6, 7-6
2023アルカラスウィンブルドン1-6, 7-6, 6-1, 3-6, 6-4
2023ジョコビッチ全仏オープンクレー6-3, 5-7, 6-1, 6-1
2022アルカラスマドリードオープンクレー6-7, 7-5, 7-6

大会6日目(8月1日)を終えて

ノヴァク・ジョコビッチ選手はステファノス・チチパス選手に、カルロス・アルカラス選手はトミー・ポール選手に準々決勝で勝利し、準決勝に進出しました。

しかしながら、東京オリンピック金メダリストのアレクサンダー・ズべレフ選手は、残念ながらロレンツォ・ムゼッティ選手に5-7, 5-7で敗れました。また、キャスパー・ルード選手もフェリックス・オジェ アリアシム選手にフルセットの末敗れています。さらにはイガ・シフィオンテク選手が鄭欽文選手に準決勝で敗退しました。準決勝・準々決勝になってくると、優勝候補に名前があがる選手でも負けてしまう展開が増えてきます。


改めて男子シングルスのベスト4を整理すると、ノヴァク・ジョコビッチ選手 vs ロレンツォ・ムゼッティ選手、カルロス・アルカラス選手 vs フェリックス・オジェ アリアシム選手となります。

ジョコビッチ選手とムゼッティ選手の対戦成績は6勝1敗でジョコビッチ選手が勝ち越してます。しかしながらクレーコートに限って言うと、2024年のモンテカルロ・マスターズを除いて全てフルセット逆転勝利という展開です。ムゼッティ選手は今シーズン、ウィンブルドン選手権ベスト4と好調な成績を残してます。対戦成績こそ圧倒しているものの、楽な相手では決してないということです。

今のジョコビッチ選手のコンディションはというと、準々決勝でチチパス選手相手に第2セットを0-4でリードされながらタイブレークまでもつれ込んでの勝利という、体力的にもキツい勝ち上がり方でした。さらに試合中に脚を滑らせ、手術した右膝を痛めたのかMTO(メディカル・タイムアウト)を取る場面も見られました。

唯一タイトルを持ってないオリンピック金メダルを本気で狙うジョコビッチ選手ですが、準決勝の相手であるムゼッティ選手は、今のコンディションや今までのクレーの対戦内容を見ても、死闘は避けられないと見ています。

勝者大会名サーフェススコア
2024ジョコビッチウィンブルドン6-4, 7-6, 6-4
2024ジョコビッチ全仏オープンクレー7-5, 6-7, 2-6, 6-3, 6-0
2024ジョコビッチモンテカルロクレー7-5, 6-3
2023ムゼッティモンテカルロクレー4-6, 7-5, 6-4
2022ジョコビッチパリマスターズハード6-0, 6-3
2022ジョコビッチドバイオープンハード6-3, 6-3
2021ジョコビッチ全仏オープンクレー6-7, 6-7, 6-1, 6-0, 4-0(RET)

次にアルカラス選手とアリアシム選手の対戦成績は3勝3敗と互角です。しかし、直近3試合は全てアルカラス選手が勝利しています。アルカラス選手は今シーズン、グランドスラム2冠を達成するなど絶好調です。アルカラス選手は右肩上がりに成長している選手なので、直近の対戦成績通りアルカラス選手が優位だと思います。

勝者大会名サーフェススコア
2024アルカラス全仏オープンクレー6-3, 6-3, 6-1
2024アルカラスインディアンウェルズハード6-2, 6-3
2023アルカラスインディアンウェルズハード6-4, 6-4
2022アリアシムバーゼルオープンハード6-3, 6-2
2022アリアシムデビス杯ハード6-7, 6-4, 6-2
2021アリアシム全米オープンハード6-3, 3-1(RET)


今大会限りで引退を表明しているBIG4の一角、アンディ・マレー選手とダニエル・エヴァンス選手のダブルスは、残念ながらトミー・ポール選手とテイラー・フリッツ選手の組に2-6, 4-6で敗れ、準々決勝敗退となりました。

この試合をもってアンディ・マレー選手の現役生活が終了いたしました。マレー選手は2012年の全米オープンでキャリア初のグランドスラム優勝を果たした後、2013年のウィンブルドン選手権で英国男子77年ぶりの優勝を飾りました。2016年に2回目のウィンブルドン選手権優勝を果たし、キャリア通算3個のGSタイトルを獲得しました。オリンピックでは2012年のロンドン五輪、2016年のリオ五輪を連覇してます。ツアー優勝通算46回、元世界ランク1位など輝かしい成績を残しました。

マレー選手、長い現役生活お疲れ様でした。どんな状況でも諦めずにボールを追いかける姿、手術して医師から「不可能だ」と言われてもツアー優勝したり、トップ選手に勝つ不屈の精神性…あなたのプレーをリアルタイムで追うことができて幸せでした。今まで本当にありがとうございました。

大会5日目(7月31日)を終えて

ノヴァク・ジョコビッチ選手、カルロス・アルカラス選手、アレクサンダー・ズべレフ選手、ステファノス・チチパス選手、キャスパー・ルード選手、ロレンツォ・ムゼッティ選手は3回戦に勝利し、準々決勝に駒を進めました。イガ・シフィオンテク選手も準々決勝に勝利し、準決勝に進出しています。

上位シード選手のダニール・メドベージェフ選手が、フェリックス・オジェ アリアシム選手に3-6, 6(5)-7のストレートで敗れました。

新旧スペイン王者コンビで注目されているラファエル・ナダル選手とカルロス・アルカラス選手のダブルスですが、残念ながら準々決勝敗退という結果になりました。ナダル選手はシングルスでジョコビッチ選手に敗れてますので、これで今大会は終了となります。シングルス・ダブルスの2冠を期待されていたアルカラス選手ですが、シングルスに集中して優勝を狙うこととなります。

大会4日目(7月30日)を終えて

アレクサンダー・ズべレフ選手、テイラー・フリッツ選手、ロレンツォ・ムゼッティ選手、ダニール・メドベージェフ選手は2回戦を勝利し、3回戦に進出しています。また、イガ・シフィオンテク選手は3回戦を勝利して4回戦進出を果たしましたが、ココ・ガウフ選手は残念ながら3回戦敗退となりました。

また、カルロス・アルカラス選手とラファエル・ナダル選手のダブルス、アンディ・マレー選手とダニエル・エヴァンス選手のダブルスは、共に3回戦進出を決めています

シングルスに出場しないBIG4の一角であるアンディ・マレー選手にとって、このダニエル・エヴァンス選手とのダブルスが現役最後の試合となります。このダブルスが負けた時点でマレー選手の長い現役生活に終止符が打たれることを思うと、勝ち進んでほしいと願ってしまいます。

大会3日目(7月29日)を終えて

大会3日目の目玉であるノヴァク・ジョコビッチ選手 vs ラファエル・ナダル選手のBIG4対決ですが、6-1、6-4のストレートでジョコビッチ選手が勝利しました。この結果により、2人の対戦成績はジョコビッチ選手の31勝29敗となりました。

引用:Tennis TV

カルロス・アルカラス選手、キャスパー・ルード選手、ステファノス・チチパス選手は2回戦に勝利し、3回戦に進出いたしました。

大会2日目(7月28日)を終えて

ラファエル・ナダル選手がマートン・フチョビッチ選手に6-1, 4-6, 6-4のフルセットで勝利し、2回選出を決めました。2回戦でノヴァク・ジョコビッチ選手 vs ラファエル・ナダル選手というBIG4対決が実現しました。

キャスパー・ルード選手、ロレンツォ・ムゼッティ選手、ステファノス・チチパス選手、アレクサンダー・ズべレフ選手も2回戦に進出しております。

錦織圭選手は残念ながら、シングルス・ダブルス共に初戦敗退となりました。ダブルスは錦織圭選手/ダニエル太郎選手 vs アンディ・マレー選手/ダニエル・エヴァンス選手の組み合わせでしたが、エヴァンス選手のロブリターンで抜かれる場面が多く、日本ペアから6-2, 6(5)-7, [9]-[11]で敗れました。

今季キャリアハイを更新しているアレックス・デミノー選手ですが、ウィンブルドン選手権で痛めた怪我の影響により、シングルスを棄権しています。

1週間前にアレクサンダー・ズべレフ選手を破って、ハンブルク・オープンで優勝したアルトゥール・フィス選手は、マッテオ・アルナルディ選手に敗れ、初戦敗退となりました。

大会初日(7月27日)を終えて

第一シードのノヴァク・ジョコビッチ選手、第7シードのテイラー・フリッツ選手が順当に2回戦進出を果たしました。雨のため、屋根のないコートで予定されていた試合は順延となってます。

大会前から話題になっていたスペインの新旧王者コンビであるラファエル・ナダル選手とカルロス・アルカラス選手のダブルスですが、7-6、6-4で勝利して2回戦進出を決めました。

ドロー

まず始めにジョコビッチ山です。

引用:Tennis Athletics

ジョコビッチ山のノヴァク・ジョコビッチ選手ですが、グランドスラム優勝史上最多24回、キャリア・グランドスラム3回、キャリア・ゴールデンマスターズ2回の偉大な実績を誇るものの、オリンピックの金メダルは獲っていません。37歳の年齢を考えると、ジョコビッチ選手は最後のチャンスとなるパリ五輪の金メダルを本気で狙っていることでしょう。

そして2回戦でもしかしたらノヴァク・ジョコビッチ選手 vs ラファエル・ナダル選手というBIG4対決が実現するかもしれないということです。

ただし、ナダル選手は身体の調子が万全とは言えず、直前の練習を休んでいることから、実現するかはわかりません。ナダル選手は1週間前にスウェーデン・オープンで準優勝してます。さらにキャスパー・ルード選手とのダブルスでも準決勝進出を果たしており、ハードワークが心配されておりました。カルロス・アルカラス選手との「スペイン新旧王者」ダブルスも注目されている中、コンディションは大丈夫なのでしょうか。

https://youtu.be/7pYe1Zv1mps?si=3PIrVxUwatZ21Lnq

ジョコビッチ山はジョコビッチ選手が安泰というわけではありません。第14シードのアルトゥール・フィス選手は2004年生まれの20歳の若手ながら、1週間前のハンブルク・オープンでアレクサンダー・ズべレフ選手を破って優勝しています。

地元フランスの選手ということもあり、好調&ホームでのオリンピックということで勢いに乗ってます。

https://youtu.be/B3c8DCaw1Us?si=PlaMEj6zMx8JUsNY


次にズべレフ山です。

引用:Tennis Athletics

ズべレフ山のアレクサンダー・ズべレフ選手は、前回の東京五輪で金メダルを獲得している優勝候補の1人です。

錦織圭選手はなんとオリンピックに5大会連続出場です。下記が錦織選手のオリンピック結果です。

開催場所開催年結果
北京2008年初戦敗退
ロンドン2012年ベスト8(5位入賞)
リオ2016年銅メダル
東京2021年ベスト8(5位入賞)
パリ2024年???

第11シードのロレンツォ・ムゼッティ選手も侮れません。先日のウィンブルドン選手権ではベスト4に進出、オリンピック前哨戦のクロアチア・オープンで準優勝と好調の様子です。


次にメドベージェフ山です。

引用:Tennis Athletics

この山はダニール・メドベージェフ選手やキャスパー・ルード選手が順当に上がってくるでしょうか。


最後にアルカラス山です。

引用:Tennis Athletics

今シーズン全仏オープン、ウィンブルドン選手権を制しているカルロス・アルカラス選手が最有力でしょう。

第5シードのアレックス・デミノー選手は一か月ほど前にウィンブルドン選手権を股関節の怪我で棄権しております。怪我が完治していれば、アルカラス選手にとっても脅威となる存在でしょう。

特筆すべきこととして、BIG4の一角であり、オリンピック二冠達成のアンディ・マレー選手がパリ五輪を現役最後の大会とし、引退すると発表しました。

当初はシングルスにも出場予定でしたが、一か月ほど前に背中の嚢胞を取る手術をしたが全快に至ってないとし、シングルスを欠場してダブルスに専念するとのことです。最後の雄姿を見届けます。

欠場選手

ヤニク・シナー選手は扁桃腺、ホルガー・ルーネ選手とホベルト・フルカチュ選手は怪我のため、パリ五輪欠場を発表しています。