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【まとめ】ウィンブルドン2024

2024年7月1日~7月14日に開催される、テニスのウィンブルドン選手権(全英オープン)の解説記事です。

記事の下から時系列順に、「ドロー→1回戦を終えて→…→準々決勝を終えて→準決勝を終えて→決勝を終えて」と追記していきます。

決勝を終えて

第2シードのノヴァク・ジョコビッチ選手と第3シードのカルロス・アルカラス選手の対決は、6-2, 6-2, 7-6(7-4)でアルカラス選手がストレート勝利し、ウィンブルドン選手権2連覇を達成いたしました。

アルカラス選手は第1セットの第1ゲームをいきなりブレークするなど、序盤から飛ばしていきます。しかし、第3セットで40-0と3度のチャンピオンシップポイントを握るも、ジョコビッチ選手が執念でブレークします。そしてタイブレークにもつれ込むも、最後までアルカラス選手が圧倒し、通算4個目のGSタイトルを獲得しました。

このアルカラス選手の勝利により、ジョコビッチ選手との対戦成績を3勝3敗のイーブンに戻しました。また、昨年のウィンブルドン選手権に続き、2年連続で決勝でジョコビッチ選手を倒した実力は若手の中でもずば抜けています。

シナー選手とアルカラス選手の2強時代が来てますが、GS成績で言うとシナー選手の1勝に対してアルカラス選手はわずか21歳にして4勝。アルカラス選手のGSでの強さを思い知らされます。

準決勝を終えて

第3シードのカルロス・アルカラス選手と第5シードのダニール・メドベージェフ選手との対決は、6-7(1-7), 6-3, 6-4, 6-4でアルカラス選手が勝利し、決勝進出を決めました。

もう一つの準決勝は第2シードのノヴァク・ジョコビッチ選手と第25シードのロレンツォ・ムゼッティ選手との対決でした。結果は6-4, 7-6(7-2), 6-4とジョコビッチ選手のストレート勝利でしたが、ムゼッティ選手の好プレーも随所で見られ、充実した試合内容でした。

決勝は第2シードのノヴァク・ジョコビッチ選手と第3シードのカルロス・アルカラス選手の組み合わせとなりました。2人の対戦成績ですが、3勝2敗でジョコビッチ選手が勝ち越しています。直近2回連続でジョコビッチ選手が勝ってはいるものの、2023年のウィンブルドン選手権決勝の舞台ではアルカラス選手がジョコビッチ選手を下して優勝しています。ジョコビッチ選手としては、昨年のリベンジに燃えているでしょう。

勝者スコア大会名
2023ジョコビッチ選手6-3, 6-2ATPファイナルズ
2023ジョコビッチ選手5-7, 7-6, 7-6シンシナティオープン
2023アルカラス選手1-6, 7-6, 6-1, 3-6, 6-4ウィンブルドン
2023ジョコビッチ選手6-3, 5-7, 6-1, 6-1全仏オープン
2022アルカラス選手6-7, 7-5, 7-6マドリードオープン

準々決勝を終えて

第5シードのダニール・メドベージェフ選手が、第1シードのヤニク・シナー選手を6-7(7-9)、6-4、7-6(7-4)、2-6、6-3のフルセットで破り、準決勝に駒を進めました。

シナー選手は第3セットの途中でMTO(メディカル・タイムアウト)を取るなど、本調子ではないようでした。試合後のインタビューでも「朝から眩暈がした」と述べてます。

メドベージェフ選手はシナー選手に5連敗中、特に今年の全豪オープンでは決勝で敗れるなど苦手な相手でしたが、勝ち切ったメドベージェフ選手のプレーはお見事でした。シナー選手とアルカラス選手の2人ばかり注目される昨今ですが、他世代が2人を倒して流れを断ち切る動きも時折見られ、面白いツアーになってきました。

第2シードのノヴァク・ジョコビッチ選手と第9シードのアレックス・デミノー選手との試合ですが、デミノー選手が股関節の怪我のため棄権したことにより、ジョコビッチ選手の準決勝進出が決定しました。デミノー選手は4回戦の最後に痛みを感じ、レントゲン検査を実施したところ、内転筋に繋がる軟骨の断裂と診断され、今月末から行われるパリ五輪出場も危ういとのことです。

デミノー選手は今シーズンは非常に好調で、1月のユナイテッドカップ後にキャリア初のトップ10入りを果たし、活躍が期待されてました。ジョコビッチ選手も「デミノーはツアーで最も足が速く、ネットに出ることを恐れないこと、サーブや展開の速さは彼の武器だ」と評してます。デミノー選手の早期の回復を願ってます。


第3シードのカルロス・アルカラス選手と第12シードのトミー・ポール選手の試合は、アルカラス選手の勝利となりました。アルカラス選手は調子が良くなくて第1セットは落とすことがあるものの、尻上がりに調子を上げていき、フルセットまで行くと驚異的なまでの勝率を誇ります。ポール選手との試合はフルセットまでは行かなかったものの、次第にギアを上げていったアルカラス選手がそのまま押し切った形になります。

第13シードのテイラー・フリッツ選手と第25シードのロレンツォ・ムゼッティ選手の試合は、フルセットの末にムゼッティ選手が勝利を収め、準決勝に進みました。

ムゼッティ選手は同じくイタリアのシナー選手より若く、22歳の新星です。3回戦でルブレフ選手を破ったコメサナ選手を、4回戦でコルダ選手を破ったペリカード選手を下しています。キャリアハイは昨年の15位ですが、本大会の活躍を見る限り、まだまだ上を狙える期待の若手です。

4回戦を終えて

第13シードのテイラー・フリッツ選手が第4シードのアレクサンダー・ズべレフ選手に、4-6, 6-7(4-7), 6-4, 7-6(7-3), 6-3の大逆転勝利を収めました。

後半はフリッツ選手のリターンが冴えていました。また、ズべレフ選手は3回戦で痛めた膝を常に気にしながら試合をしていた様子でした。そのせいか、ズべレフ選手のフットワークが試合を通して本調子ではありませんでした。しかし、ここはフリッツ選手の不屈のメンタルを称えるべきでしょう。

怪我はテニスには付き物です。第10シードのグリゴール・ディミトロフ選手ですが、第5シードのダニール・メドベージェフ選手との試合中に右脚を負傷し、4回戦を棄権しました。

33歳のベテランであるディミトロフ選手ですが、今シーズンは1月に6年ぶりにブリスベン国際で優勝、3月のマイアミオープンで準優勝して5年半ぶりにトップ10に復帰するなど、好調でした。満を持して挑んだウィンブルドン選手権が、怪我で棄権という形になってしまったのは残念です。


第1シードのヤニク・シナー選手 vs 第14シードのベン・シェルトン選手は、シナー選手が6-2、6-4、7-6(9)のストレートで勝利し、準々決勝に進出しました。

第3セットのタイブレークでは、シナー選手が5-2とリードしていたにも関わらず、ミスで5-6となる場面がありました。ここをシェルトン選手が取れば流れも変わっていたかもしれませんが、これまでの3試合全てフルセットの死闘を繰り広げてきたシェルトン選手には疲れもあったでしょうか。最後はシェルトン選手のダブルフォルトでシナー選手の勝利が決定しました。

1回戦で第20シードのコルダ選手を破った予選勝者のジョバニ・ペリカール選手ですが、第25シードのロレンツォ・ムゼッティ選手に敗れました。しかし、予選から勝ち上がって4回戦進出という結果は立派です。ペリカール選手の今後の活躍に期待します。


第2シードのノヴァク・ジョコビッチ選手 vs 第15シードのホルガー・ルーネ選手は、ジョコビッチ選手が6-3、6-4、6-2のストレートでルーネ選手を下し、準々決勝に進出しました。

ジョコビッチ選手は、1か月前の全仏オープンで右膝内側半月板損傷と診断されて手術をしており、コンディションは万全ではないはずなのですが、勢いあるルーネ選手にストレート勝利とは驚きました。

試合前の対戦成績はジョコビッチ選手が3勝2敗とルーネ選手に勝ち越してはいますが、圧倒してないどころかむしろ競ってます。そんなルーネ選手を警戒してなのか、試合開始序盤から集中しており、精密機械のようなボールコントロールで12ポイント連続でルーネ選手を苦しめます。

要所で決められるサーブなど、GSでの勝ち方を熟知しているジョコビッチ選手の試合運びは素晴らしかったです。特にメンタル面での強さが印象付けられたのは、試合後のインタビューでした。観客のルーネコールやブーイングに対し、ジョコビッチ選手は「私はもっと過酷な環境でプレーしてきました。あなたたち観客が私に影響を与えることなど、絶対にできない」と回答しました。ジョコビッチ選手の反骨精神がよく表れたセリフだと思いました。

3回戦を終えて

3回戦のハイライトは第3シードのカルロス・アルカラス選手vs第29シードのフランシス・ティアフォー選手の対戦でしょう。スコアは5-7, 6-2, 4-6, 7-6 (7-2), 6-2と、アルカラス選手のフルセット逆転勝利です。

第3セットまでティアフォー選手優勢かと思いました。アルカラス選手のサーブ・フォア・リターンが安定しなかったからです。しかし第4セットのタイブレークで、アルカラス選手は5ポイント連取と一気に突き放します。こういった勝負所でギアを上げることができるのがアルカラス選手の強さです。

この2人は2022年の全米オープン準決勝でもフルセットの熱戦を繰り広げています。このときもアルカラス選手が勝利しています(そしてそのまま優勝)。

その他の特筆すべきカードとして、36歳のロベルト・バウティスタ・アグート選手 vs 37歳のファビオ・フォニーニ選手の試合が挙げられます。結果はアグート選手のフルセット逆転勝利でした。

また、1回戦で第6シードのルブレフ選手を破った23歳のフランシスコ・コメサナ選手ですが、残念ながら3回戦で第25シードのロレンツォ・ムゼッティ選手に敗れました。

第14シードのベン・シェルトン選手 vs デニス・シャポバロフ選手の試合もフルセットの激闘でした。元ランキング10位のシャポバロフ選手はプロテクトランキング制度(負傷などで長期離脱した選手に対する救済措置)を利用しての出場でした。結果は6‐7(4‐7)、6‐2、6‐4、4‐6、6‐2のフルセットでシェルトン選手が勝利してます。

芝に強く、今シーズン好調のストルフ選手ですが、第5シードのメドベージェフ選手に敗れました。敗れたものの、随所で見せたネットプレーは素晴らしかったです。

第10シードで33歳のグリゴール・ディミトロフ選手 vs 37歳のガエル・モンフィス選手のベテラン対決も要注目です。結果はディミトロフ選手がストレート勝利を収め、4回戦に進出しました。

2回戦を終えて

2回戦では第8シードのキャスパー・ルード選手、第11シードのステファノス・チチパス選手が姿を消してしまいました

また、大会前から注目していたヤニク・シナー選手vsマッテオ・ベレッティー二選手のイタリア対決ですが、結果はシナー選手の勝利に終わりましたが、7-6(7-3), 7-6(7-4), 2-6, 7-6(7-4)とタイブレークにもつれ込む展開が多く、シナー選手も体力的に消耗していると思います。5セットマッチのGSでは、初週にどれだけ省エネで勝ち上がるかが優勝の鍵になってきます。勝敗という結果だけではなく、今後のシナー選手の勝ち上がり方にも注目です。

同様に大会前から注目していた今シーズン好調のストルフ選手ですが、第32シードのジャン・ジジェン選手を下して3回戦進出を決めました。

他には残念ながら、第7シードのホベルト・フルカチュ選手が脚の怪我で棄権をすることになりました。今シーズンはキャリアハイを更新しており、活躍が期待されていただけに、フルカチュ選手の棄権は残念でした。

スタン・ワウリンカ選手とガエル・モンフィス選手のベテラン対決も外せません。ワウリンカ選手は1985年生まれの39歳、モンフィス選手は1986年生まれの37歳。結果はモンフィスが勝利し、3回戦に進みました。

1回戦を終えて

1回戦では第6シードのアンドレイ・ルブレフ選手、第17シードのフェリックス・オジェ・アリアシム選手、第20シードのセバスチャン・コルダ選手などが1回戦で姿を消すという波乱がありました。

ルブレフ選手は今シーズンはアンガーマネジメントが上手くいっておらず、不安定なメンタルが悪い方向に試合を左右してしまう展開が多く見られました。相手はアルゼンチン出身、2000年生まれの23歳フランシスコ・コメサナ選手。身長178センチと小柄ながら、トップ10のルブレフ選手を倒した実力は本物。今後の活躍に期待してます。

アリアシム選手はコキナキス選手に2セット選手しますが、雨の影響でコート状況が悪く、試合が中断します。

中断明けはコキナキス選手優位の展開で、結果は4-6, 5-7, 7-6(9), 6-4, 6-4のフルセットでコキナキス選手の勝利となりました。

コルダ選手は当初はダビドビッチ・フォキナ選手と対戦予定でしたが、フォキナ選手が背中の怪我の影響で棄権したことにより、急遽ジョバ二・ンペシ・ペリカール選手と対戦することになりました。

ジョバニ・ペリカール選手は、フランス出身で2003年生まれの20歳です。身長203センチと大柄であり、2024年7月1日付けランキングで58位とキャリアハイを更新している期待の新人です。

インタビューを聞くと、年齢のわりに落ち着きがある様子です。今後の活躍に期待します。

引用:TENNIS CHANNEL

残念ながら錦織圭選手は、アンダー・リンダークネッシュ選手にフルセットで負けてしまいました。また錦織選手がGSで活躍される姿を見たいです。

ドロー

まず始めに、シナー山です。

この山を勝ち上がるのは、全豪オープン優勝で初のGSタイトルを獲得し、世界1位であるヤニク・シナー選手が有力でしょう。

他には元6位のベレッティー二選手も有力です。2021年のウィンブルドン選手権では準優勝をしている実力者です。2023年の怪我の影響で長期離脱していたベレッティー二選手ですが、2024年4月に開催されたハサン2世グランプリで復帰後初の優勝を飾るなど、順調に調子を戻しつつあります。2回戦でシナー選手vsベレッティー二選手が実現する可能性もあり、楽しみです。

ストルフ選手はノーシードながら、前哨戦であるハレ・オープンでチチパス選手を破り決勝に進出。決勝では残念ながらシナー選手に敗れてしまいますが、193センチの長身から繰り出される強烈なショットは強い武器であり、注目の選手です。

引用:TennisTV

次にアルカラス山です。

アルカラス選手はディフェンディング・チャンピオンであり、今シーズンは全仏オープンを優勝しています。

他の有力選手は第8シードのキャスパー・ルード選手でしょう。ルード選手は最高ランク2位、全仏・全米オープンで準優勝経験がある実力者です。しかしながら芝を苦手としており、ウィンブルドン選手権の最高成績は2回戦と振るいません。

ビッグ4時代が終わり、新星の活躍が目覚ましい昨今、新たなるダークホースの出現に期待してます。

引用:TennisTV

次にズべレフ山です。

アレクサンダー・ズべレフ選手は、今シーズンは全仏オープン準優勝と好調であり、活躍が期待されます。

他には第13シードのテイラー・フリッツ選手にも注目です。今シーズンは全豪オープンでベスト8に入る活躍を見せるなど、力をつけてきています。

また、錦織圭選手にも注目です。慢性的な怪我で昨今は棄権が続いていた錦織選手ですが、2021年以来3年ぶりにウィンブルドン選手権の本選入りを果たしました。

引用:TennisTV

最後にジョコビッチ山です。

ノヴァク・ジョコビッチ選手は、先日の全仏オープンを膝の怪我で準々決勝を棄権しており、その後の右膝の手術から1か月足らずでのウィンブルドン選手権参戦という流れです。これまでウィンブルドン選手権では7回優勝しており、今回で2年ぶり8回目の優勝となるか、注目です。

第7シードのフベルト・フルカチュ選手は、2024年6月24日付けのランキングで最高7位を更新しており、キャリアの絶頂期にある選手です。2021年のウィンブルドン選手権ではベスト4に進出。今年のエストリル・オープンでツアー優勝を果たしたことで、全サーフェスでの優勝記録を持つ選手となりました。

第9シードのアレックス・デミノー選手も、今年1月のユナイテッド・カップ後にキャリア初のトップ10入りを果たし、キャリア絶頂期を迎えている選手の一人です。

他にも第15シードのホルガー・ルーネ選手など実力ある選手がひしめくジョコビッチ山。ジョコビッチ選手の怪我がなければジョコビッチ選手の勝ち上がりという見方が有力ですが、誰が勝ち上がるか読めないというのが正直な感想です。

引用:TennisTV